2002年7月9日 我が子を水難事故で亡くさないために

夏がくると思い出すことがある。うちの三男が県南は蒲江、元猿の海で、あやうくおぼれそうになったことである。三男が小学6年生のとき、入っていた少年野球のクラブが県大会で2位になったご褒美のリクレーションで、クラブをあげて県南の海に海水浴を一泊で行った。私は当直勤務で、当直明けで向かっても11時ころにしか着かず、12時には終了となっていたため、少し胸騒ぎを覚えたものの、行かなかった。その海水浴場で11時頃彼はおぼれかけたのだ。クラブ付き添いの大人が見つけてくれて、服を着たままあわてて海に飛び込み助けてくれたため事なきを得たのだが、後でそれを聞いて心底冷えた。その夜、助けてくれた方の家に、三男と一緒にお礼にゆき、彼が無事であった幸せをかみしめたものだ。
彼は泳げないわけではない。次男のようにスイミングスクールに通ったりはしなかったが、生来運動神経がよかった上、小さい頃から野球少年で身体を鍛え、水泳でも50mは問題なく泳げていた。しかしそれはプールでの能力に過ぎなかったのである。岸のあたりで泳いでいた彼は、突然足が立たないことに気づいてパニックになったのだ。海岸ではありがちなことである。浮くことさえ出来れば、慌てずまわりを見回し、岸の方向に少しばかり泳げば問題なかったはずなのである。ところがそれが出来なかった。立ち泳ぎを知らなかったことが原因であると私は考える。立ち泳ぎは、背が届かないところでないと訓練できない。しかしプールでは足が立つので訓練しようがない。

しかし、危機感を覚えた私は、なんとしても立ち泳ぎを覚えてもらわねばならないと思った。そこで編み出したのが、ミジンコ泳ぎである。足を曲げてお腹につけ、手だけで顔を水面に出すよう泳ぐ。格好がミジンコに似てるかなと思って、ミジンコ泳ぎと命名した。これなら足のたつプールでも簡単に訓練ができる。彼はすぐにこの泳ぎを習得してくれた。ミジンコ泳ぎが出来れば、立ち泳ぎはさらに簡単である。ミジンコ泳ぎとは、足を使わない立ち泳ぎなのである。顔が水面上に出しておれる自信があれば、パニックになることは少ないはずだ。
毎年、夏になると、子供の水難事故が後をたたない。おそらく今年も何人も亡くなるのだろう。イギリスでは、子供の水難事故を防ぐため、服を着たまま泳ぐことを教えるという。日本でも一部それを取り入れている小学校もあるやに聞く。しかし、それは結構大変なことだし(第一着ていた服を全て取り替えないといけない)、反復して教えるのは無理があるだろう。そこで私のミジンコ泳ぎの登場である。普段のプール練習の日に、簡単に、反復して教えることができる。もちろんこれを知っているからといって、何キロも沖で船から落ちて助かるなどというものではない。しかし、多くの子供は、岸から少しのところで溺れているのではないだろうか。足が立たずにパニックになり、もがき、水を飲み、溺れてしまうはずだ。そのとき、このミジンコ泳ぎを知っておけば、少なくともパニックになることは防げる。そこで冷静にどうやれば岸に戻れるか考える余裕が生まれるはずだ。わが子を事故で亡くすことほどの不幸はない。あの時行かせなければ、と一生悔やむことになってしまうのだ。小学生の子供を持つ親の諸君よ、是非、ミジンコ泳ぎを我が子に教えよう。

BACK