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2004年6月29日 ヨン様が溶かす日韓

緊迫のイラク情勢や、参議院選挙の時期におめでたいことを言って恐縮だが、実は冬のソナタにはまりつつある。ここのところNHK総合で土曜日に放映するようになって、何度か見てしまったのだ。BSで放映しているころからコマーシャルビデオは何度か見ていたが、主人公のきざっぽい風貌に気に障るところがありこれまで一切無視してきた。ところが知らぬ間に世間、それも女性の皆さんの中の話題の中心を占めているではないか。世間の評判とのこのズレは、PC98(実際はエプソンのコンパチだったが)で新松と123を使って仕事しているうちに、世の中がウインドウズPCに変化していることに相当遅れて気がついたときに似ている出遅れ感だ。で、何度か見ていて、口惜しいがはまりかけている。一つはユジン役の女優の鼻から下の部分が竹下景子に似てるなと思ったときから普通に見れるようになったことが原因だ。韓国製を意識しなくなった、というべきだろうか。ストーリーは相当無理があるように思う。その上、主役のミニョンがあまりにタイミングよくユジンの前に現れすぎと思われ、これじゃストーカーだよなんて突っ込みを入れたくもなるが、ファンからみれば、会いたいときに必ず来てくれる、という解釈になるのだろうか。そういう役柄の解釈については、男性と女性との間に大きな隔たりがあるようにも思う。そして多くの日本の女性達の支持を勝ち取ったのがペ・ヨンジュ、つまりヨン様というわけである。

僕はこれを凄いことだ、あるいは素晴らしい現象だと思う。彼の国とはいわく言い難い大きな溝がある。日本の朝鮮侵略のみならず、秀吉の朝鮮討伐まで持ち出して、批判されれば、元寇のときに侵略しに来たのは朝鮮軍ではないかという議論まで持ち出して構える空気が確かにある。以前このコラムにも書いたが、韓国に行った日本人がボラれたりするのは当たり前という国民感情が未だに存在するのだ。そういうお互いの頑なな心が、若い人々の間でずいぶん緩んだのが、サッカーワールドカップの日韓共催のときと言われる。あのときジャパンのサポーターは、確かに善戦を続けるコリアチームの応援をしたのだ。彼らは驚いたという。なぜなら彼らはジャパンチームが早く負けろと願っていたようだからだ。それも理解できる感情である。そしてヨン様騒動は、わが国の中年期以降の頑なな心を、女性限定とはいえ溶かしてくれている。だってそうではないか。韓国の側からみて、自国の男優に、日本の女性がぞっこんだ、というのは気分悪かろうはずがない。今は田舎の本屋も冬ソナコーナーがあるし、ビデオ屋では韓国コーナーが出来ているのだ。あとは中年期以降の男性の心をどうやって変えるか、が課題として残ったわけだ。

ながく韓国は、文化侵略拒否として、日本の現代映画、歌謡の類を禁止してきた。それを解消したのが金大中政権の英断だった。それが英断であることを、そして文化交流の禁止が愚策であることを、この度の状況をみてあらためて思える。今週は私もブラザーフッドを見に行こう。