BACK

コラムリストへ

2010年8月2日 たんの自動吸引が現実に

本日ついに、自動吸引マニュアルを公開いたしました。あと1年と言い続けて何年にもなりますが、本当にお待たせいたしました。

思えば、喀痰自動吸引の開発をしようと決意して、10年の歳月が経ってしまいました。私にとってはあっという間の10年とも感じますが、よくある話のように途中で雲散霧消することなく(実は最初の二年目でしかかっていたのですが)、このたびカニューレの薬事承認も得て、なんとか皆さんにお使いいただける状態にこぎつけたことを心から嬉しく思っています。

毎日過酷なALSの在宅人工呼吸の介護、看護のなかでも、夜間のたんの吸引はとりわけ介護者の体力を奪います。せめて朝までゆっくり寝かせてあげたいという思いでこの研究を始めました。最初は電動式吸引器の電源を管理する方法。しかしそれは、吸引タイミングのエラーと換気損失の大きさからこの方法を捨てました。しかしそのときから始めたカニューレにカフ下部の吸引ラインを設置するという考えは、それが認められたら新たなデバイスを付属させることなく(すなわち余分な費用がかからず)自動吸引が導入できるし、既存の方法との併用も可能ということで今も生き残ったシステムです。微量の吸引でもたんは引けるということが判り、ローラーポンプに大きな期待が持てましたが、吸引器の国の基準が最低2L/分の吸引能力というところと、チューブの耐久性の面から当面はあきらめざるを得ませんでした。カニューレ設置のカフ下部吸引ラインも、吸引孔の開ける位置や形状で様々な試行錯誤をしてきました。結果として安全性を何より重視して、カニューレ内吸引孔としましたが、嬉しいことに性能はむしろ向上していました。

自動吸引装置の詳細は、自動吸引マニュアルをご覧いただくとして、あとはこのシステムが現場に受け入れられ、在宅の有効な手助けとなって継続されること、そして誤った使い方で事故が起こらないことを祈るのみです。

ここ二週間ばかり、自動吸引マニュアルの作成で精魂使い果たしましたので、このコラムはこの程度の短文にさせていただきます。自動吸引マニュアルを是非お読みくださり、筆者の考えをご理解いただくことを願っています。

おいおい開発のエピソードなど書かせていただきます。