2001年7月18日特定疾患認定の奇妙な変更

この4月から、特定疾患の認定の方法が変わったらしい。これまで、ALSのような重症の難病で、この申請を行って却下されたなんて例はなかった。それが、起こってしまったのだ。

却下された患者はKさん、45歳男性。四肢筋力低下著明、終夜および日中も時に応じてバイパップ使用(使わないと血中炭酸ガスが90mmHgになってしまう)、胃瘻作成。ほとんど寝たきりで、車椅子に短時間なら乗れるという状態。


これまでこのような重症患者が、特定疾患から外れるということはありませんでした(県も確認)。ところが、この4月から、申請書がコンピュータ処理され、大項目(球麻痺、上位運動ニューロン障害、下位運動ニューロン障害)のうち2つ以上、しかも、その項目認定は、副項目全て!認められるときに限ることになったという。「球麻痺」には、舌の萎縮、繊維束性収縮、構音障害、嚥下障害の副項目4項のうち、ひとつでも入らなかったら、球麻痺なし!になるというのだ。また、上位運動ニューロン徴候には、痙縮、腱反射亢進、病的反射となっているが、これもひとつでもはずれたら「なし」と判断されるという。比較的初期の場合、全てが認められるというより、部分的に発生してくるというのが普通だから、この改変が行政の認定を決定するというのなら、最重症の寝たきり患者しか、特定疾患の対象になれないということになってしまう。当該患者は、球麻痺について「舌の萎縮」のみ欠けていたため却下されていたことがわかった(つまり「球麻痺」の他の項目は全て満たしているのだ)。


この決定に疑問を感じ、県に問い合わせたところ、「特定疾患調査解析システム、一次診断結果疑い理由」なる文書を送ってきた。画一的なコンピュータ登録(どれかひとつでも入らなかったら認めない)で、特定疾患の決定が左右されるということが許されることだろうか。この決定は、認定協議会を経て、行政の責任で決定するということだ。コンピューターの画一的判断が全てだとしたら、何のための協議会であろう。大いに疑問を感ずる。


2年前、比較的軽症の特定疾患患者にも自己負担が課せられるようになった。今度は、その程度の進行段階では、特定疾患にさえ認めないということになる。しかもこのこと(全ての項目を満足しないと有効にならない)が現場の医師に全く開示されていないため、今後多くの新規申請患者が却下になると思われる。さらに3年に一回の更新に際して、多くの患者が却下される可能性があると危惧される。しかも、この行政処分については、不服申し立ての制度さえない。

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このことを日本ALS協会に問い合わせたところ、認定の実務は以前と変わらないという厚労省の説明を受けていたが、実態はそのようになっているのかと驚いていた。さっそく厚労省の担当課長と話をして、是正措置を要請したということである。あきらかにどこかにボタンの掛け違いが生じているように思われる。しかし、行政の思い込みによって、明らかにおかしな決定がなされ、それを変だとも思わない。行政の担当者は財政緊縮の折だからあたりまえだという感覚で理解しているようだった。腹が立つというより情けない、地元行政の実態である。

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