2001年10月20日 胃瘻カテーテルによる副作用

最近、とくにPEG(胃カメラを使って、お腹を開けずに胃瘻を設置する手技)が一般化されて以来、胃瘻(栄養剤を体外から直接胃内に注入するルート)を有する患者が増えている。これはもちろん患者さんにとって福音といえ、あの鼻の穴から管を入れ放した状態より、よほど苦痛がないし、入れ替えも最小限度ですむ。私たちも、ALSは早期から嚥下困難が生じてしまうことが多いので、積極的にすすめてきた。長い人はもう10年以上になるだろう。これまで胃瘻を用いることによるトラブルは、使用していたフォーリーカテーテルが十二指腸に引き込まれ、その状態で栄養剤を注入することによってダンピング症候群が発生したくらいであった。しかし、今回かなり深刻なハザードが出現してしまった。バードの胃瘻用バルーンカテーテルを使った患者に、わずか2週間で出血性潰瘍が出来てしまったのだ。コンタクトが非常にとりにくい患者さんだったので、入れ替えて2週間目に胃カメラしたのは単に幸運だったせいだ。そのまま知らずに使いつづけて、大出血などを来たしていたらと、冷や汗が出る。
この2月の医療保険の小改正で、胃瘻に用いる材料は、専用のものしかコストが取れなくなった。そこで各社から専用の胃瘻用カテーテルが出されているのだが、最近のバルーンタイプは、体外に引き込まれ防止のストッパーがついている。体外をそれで固定し、胃内でバルーンを膨らませると、カテーテルは胃内に直立した状態で固定されることになる。バードのそれは、バルーンの先に数ミリ先端が突出しており、それが胃の同じ部位にあたりつづけ、傷つけたと推測される。詳細はこちらに報告しておいたので、医療関係者は是非一読願いたい。
胃瘻用には、たけの短いボタンタイプと、入れ替えの簡単なバルーンタイプがある。私たちはこれまでボタンタイプを使ってきたが、入れ替えが苦痛だという方、栄養を入れるときにお腹を出すのが嫌だという方には、バルーンタイプも使っている。これまでボタンタイプでこのような潰瘍の出現はなかったが、バルーンタイプで早速これが生じたのは、胃内のたけが、せいぜい10〜20mmしかないボタンタイプに対し、バードのバルーンタイプでは37mmもあることも一因であろう。
胃瘻は、一度作成してしまえば経鼻よりよほど安全に使えるので、老人施設や在宅など、医療的なサポートが弱い部分でも頻用されてきている。そういう場所こそ、より安全な器具を選択すべきであろう。例えば、富士システムズ製のファイコンは、同じバルーンタイプでも、先端が林檎のお尻のように引っ込んでいて、より安全ではないかと思われる。バードのような先端が突出したタイプの使用は、すぐ止めるべきである。

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