2018年1月29日 後傾は楽しい、しかし危険

大分協和病院 院長 山本真

ふわっと身体がういたと思ったら最初に頭が雪面に接触し、つぎに身体が落ちました。瞬間何が起こったのかわからないままでした。はい、スキーです。久しぶりに自分史に残る大転倒やらかしました。当日家に帰るまではなんということがなかったのですが、翌日右下腿、右肩、そして喉のあたりに痛みが出ています。かなりのダメージがあったのだとわかりました。

最近、スキーは後傾が楽しいと思い至り、フルスピードで後傾で落ちるように滑りくだっていたときに一瞬のうちに後方バック転のような状態になって頭から落ちたようなのです。転倒した直後、先日ヨットでやらかしたような、手足が痺れたりなどは幸いせず、脊髄をいためずにすんだ思いました。しかし、一体何が起こったのか。

その前に後傾とはなにか、という話をします。先生、スキーは前傾ですよ。親指でしっかりスキーを押さえてください、というのがスキーを本格的に始めたときのコーチの話です。スキーは前傾、これが鉄則でした。黙々と長い板で練習し、少しでも膝がつくように、板をずらさずきれいにカーブを描くことを目標に練習したものです。昔は板は、身長プラス20cmなどといわれていました。スキーヤーは長さを競っているようなところがありました。私は、コーチ(180cmの身長)のお下がりのアトミックの2mを当初使っておりました。今は時代がかわり、太くて短いカービングスキーなどが主流です。といっても、もはやスキー場でスキーは少数派でしかありません。ご存知のようにスノボ全盛です。しかし10年以上前に板をメーター(2mの長さのこと)から字のことく1m(ショートスキー)に変えて、本当にスキーが楽しくなりました。今も続けている所以です。とにかく板をショートにすると、楽しいのですが、雪面が荒れていると、短く軽いためか板が振られまくるのです。新雪を滑るときは長板でも後傾にするのですが、ショートスキーの場合、通常の雪面でも後傾にすると振られなくなり、実に取り回しがうまくいくのです。こぶ斜面のようなところでは、後半でエッジを効かせて減速するとともに前の板を振り回すのがスムーズになります。さらに、スピードの上がる中斜面で後傾でかっ飛ばす楽しさを覚えていきました。少々雪面が荒れていようがまっすぐ落ちるように滑って行けます。これは楽しい。そういう滑りをしていた瞬間、上記のような事態が発生しました。

何が起こったのかわからず、しかし幸いすぐ起きることができてまた滑りつづけたのですが、ほどなく2回目が起こりました。一回目のとき、身体が飛ぶ前に一瞬景色が逆に走るのが見えた記憶が残っています。そのあと身体が飛びました。2回目ははっきり何が起こったのかわかりました。後傾ですから、後ろの部分でエッジをかけています。そこがアイスバーンに乗って、エッジがかからないだけでなく、身体が一気に回転させられていたのです。一瞬で180度転回して、一回目はそのまま荒れた雪面にスキー後部がささり吹っ飛んだのだと思います。2回目は後ろを向いた自覚があったので、横に逃げ、飛ばされずに済みました。今まで経験したことのない転倒だったのでびっくりしましたが、中斜面での後傾のこわさが身に染みてわかりました。私たちのような還暦越えスキーヤーは、何歳までスキーが可能かというのがテーマとなりますが、こういう転倒を繰り返していたら、いつか大きなダメージを頭部や頚部に受けそうだと自覚しています。この後は、もう少し慎重に滑らなくてはならないと思い至りました。センセー、無謀ってのは帽子をかぶらないのとは違うんですよ〜というかつてのコーチの言を思い出しました。