コーケンエンドスコープリーダーを使った胃カメラ挿入法

 

 2020年10月29日
大分協和病院院長 山本真

ご挨拶

私たちは2010年に市販となった気管内吸引機能を有する特殊な気管カニューレ(現在はコーケンダブルサクションカニューレとして市販)の開発を共に行った轄l、と、次の課題として意識下で嘔吐反射を極力起こさない胃カメラの経口挿入支援器具の開発をすすめてきました。誰もが苦痛なくくわえられる長さと最適な視野を得るスリーブの角度と曲率の設定など形態上の確定とともに、口呼吸による咽頭通路確保や、舌の下顎内格納法などのより有効性を高める方法論の開発をへて、このたび2020年10月29日に、コーケンエンドスコープリーダーの名称で市販の運びとなりました。誰もが苦痛なくくわえることができて、多くの方でカメラが舌根に触れないため、咽頭内での視野がとぎれず梨状窩までスムーズにカメラを誘導することができます。同時に胃カメラ挿入時の「おえ」が大幅に軽減されます。ただし上記の使用法については、多少のコツがありますので、以下説明したいと思います。ただし極度の咽頭反射を呈する患者には効果は限定的であることをあらかじめご理解ください。近年胃カメラ時での静脈麻酔が多くなっていますが、一定数の事故は起こっています1)。安全で患者にとってもより楽に意識下での胃カメラが可能になることを願って本品の開発を行いました。是非一度ご体験いただき、効果を実感していただきたいと存じます。

参考文献
1)金子榮蔵 原田英雄 春日井達蔵 他:消化器内視鏡関連の偶発症に関する第4回全国調査報告−1988年より2002年までの5年間,Gastroenterological Endscopy, 46(1):54ー61,2004 .

リンク
高研 新製品情報(コーケンエンドスコープリーダー)

 

私たちと高研で共同開発したコーケンエンドスコープリーダー(以下KEL)。これをくわえることで嘔吐反射が出ることはありません。
マウスピースのスリーブが適度に口腔内を斜め上方を向き、舌を下に保持して咽頭への通路を確保します。KEL下側の二枚の羽の間に下歯列を置いて、適当な角度になるようKEL上方のイボを上歯列で噛んでもらいます。
静脈麻酔を行わないための器具ですので、咽頭麻酔は十分に行ってください。
被験者の頭部を少し後傾し、可能なら鼻クリップをつけて口呼吸をしてもらいます(重要)。ここで舌と上口蓋にスペースがあればそのまま挿入可能です。
カメラでKEL内を覗いてみて、舌がマウスピースの奥に盛り上がり、咽頭内の通路が塞がれていた場合は、舌先で歯茎をふれてもらうよう指示します(赤矢印 下顎内格納法)。

詳細説明

では、実例での説明です。
@カメラを入れる直前の画像です。被験者の鼻をクリップで閉鎖しています。口呼吸を深く1,2回してもらい、のどを開きます。そして吸気にあわせてカメラをKEL内に挿入します。

なお、舌をKELの下に入れて、マウスピースを通して息を吸うように指示すると効果的に咽頭が開きます。これができる方は、鼻クリップも必要ありません。(2024.4)


AKELの出口での視野を示します。写真下側(上額内側)を通ってカメラを進入させていきます。
Bエンドスコープリーダーを出た位置での視野です。カメラを矢印の方向に、口蓋垂の横を通って舌根に触らず上口蓋にそって咽頭内に入れてゆきます。
C中部咽頭です。このように咽頭内で視野が赤玉になることはありません。そのまま後壁にそってカメラを奥に入れてゆきます。
D声帯と梨状窩が見えてきました。このまま梨状窩を突破します。
F食道に到達しました。ここまでに患者の反射は通常ありません。鼻クリップを外し、舌はカメラを触れない位置においてもらい、上部消化管の検査を行います。カメラ抜去時は被験者の体軸方向下向きにカメラを抜くと舌根に触れずにカメラを抜いていくことが可能で、咽頭内の観察が容易になります。

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