自動吸引マニュアル1

 

私たちは、2000年より大分県で気切患者のための自動吸引装置開発のチームを組み、研究を続けてまいりました。その成果として生み出されたのが、カニューレ内低量持続吸引という方法です。このたび、関連する医療機器の薬事承認がそろい、自動吸引が、医療現場で実施可能となりました。本方法は、多くの気切患者の安全と、看護・介護負担の軽減につながるものと確信しています。しかしながら、限界や誤使用による危険性などの問題があることも事実です。そこで、安全に自動吸引を実施していただけるように自動吸引マニュアルを作成しました。これから自動吸引を行おうとお考えのDrは、本マニュアルを十分ご熟読され、以下の内容にご同意の上で実施していただくようお願いいたします。ご質問やご感想などはこちらにお送りください。もし実際にお使いいただけた場合、効果がどの程度であったかなどをご連絡いただけるとありがたいです。今後のシステムのさらなる改良に生かしたいと考えております。

2010年7月31日,開発者代表 
 大分協和病院 院長 山本真

連絡先 〒870-1133大分市大字宮崎953-1
大分協和病院
п@097-568-2333 Fax 097-568-0795         

1.はじめに

 私たちは1999年より、神経難病の在宅療養の介護負担の軽減のため、気管内のたんを自動で吸引を行うシステムの開発に取り組んできました(注1)。現在のカニューレに埋め込んだ吸引ラインから、低量持続的に吸引するというシステムの原型ができたのが2004年です。そして2010年、ついに自動吸引に必要な医療器具、すなわち吸引用のカニューレと、低量持続吸引が可能な吸引器が、ともに薬事承認を取得することができて、病院内でも、在宅でも、必要とされる患者さんに使うことが可能になりました。ただし、自動吸引という概念が医療保険上存在しないため、医療現場において患者さんに自動吸引を行う場合は、主治医の責任のもとに両者を接合してご使用していただくことになります。これまでは吸引用カニューレが非承認医療器具でしたので、臨床試用については限られた医療機関で研究用として倫理委員会の許可を必要としてきましたが、医療器具として承認されたため、両者の接合と患者への適用については、医師の裁量として実施することが可能になりました。主治医の先生方におかれましては、本マニュアルをご参考にしていただき、その原理を十分理解していただいたうえで、対象の患者さんに適応があるか、ご検討ください。本システムは、誤った使用法をとらない限り安全性は確保されています。しかし大容量吸引器を接続するなどの誤った使用法を行った場合は、ただちに患者さんの危険につながります。そういうことについて、患者、家族のみならず、訪問看護、訪問介護のスタッフにも、正しく理解していただけるようご説明ください。もちろん、装着される患者さんや、ご家族の同意を得たうえで自動吸引を行ってください。

注1:過去の研究報告書へのリンクおよび参考文献を示す
2001年研究報告書
2003年研究報告書

2003〜2004年報告書
2007年報告書(PDF)
2008年報告書(PDF)
山本真,自動吸引器Clinical Rehabilitation 19(3),279~283, 2010. 
山本真,痰の自動吸引が在宅でも可能になります.難病と在宅ケア16(4)6365,2010.

山本真,患者の安全と介護者の負担軽減のために.気管カニューレからの喀痰の自動吸引システムの導入が可能に.
   訪問看護と介護15(7):5445472010.

上記内容に同意し先に進む